日々交流日記_2020年12月6日

「高校生限定 劇的!バスツアー」inオーバード・ホール

去る12月6日、「タニノクロウxオール富山2ndstage 笑顔の砦’20帰郷」演劇公演を鑑賞するため、高校生、ユース、舞台関係者、スタッフ、ナビゲーター総勢20名で富山駅前に立地するオーバード・ホールへ出かけました。

画像1

➡「笑顔の砦’20帰郷」特集ページhttps://www.aubade.or.jp/static/special/egaonotoride/

舞台芸術鑑賞事業の一環で昨年度からスタートした「高校生限定 劇的!バスツアー」は今年、遠方へのお出かけを控える代わりに近隣の劇場へ足を運ぶこととしました。このプログラムはユースに舞台芸術の世界に親しんでもらい、そこから自己と向き合い、他者への眼差しを育み、人生や社会を考察する機会としてもらおうという事業です。今年度は富山と石川で3回実施します。

画像2

➡「劇的!バスツアー」詳細ページ  http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=69&d=1940

新型コロナ感染拡大が収束しない中、公演を実現にこぎつけるため劇場関係者がいかに知恵を絞り、粘り強く準備されたことか、そのご尽力は計り知れません。その上このバスツアーを快く受け入れてくださり、有意義な滞在になるようにとご配慮を賜りました。お陰様で私たちはツアーに参加した皆さんと生の演劇公演を鑑賞し、上演後に作・演出家のタニノクロウさんとの貴重な対話の時間をいただくことができたのです。

食べることから始まる

物語は流れ者の漁師仲間が同居する部屋と、認知症の母を介護する藤田家の部屋での異なる出来事が同時進行します。踏ん張りながら、それぞれの現実を生きる人々の、生活の移ろいを描いていきます。

画像3

     <舞台セット全景/ 左が漁師の部屋、右が藤田家の部屋>

画像4

            <漁師の部屋>

「笑顔の砦’20帰郷」でまず印象深いことと言えばタニノ作品の代名詞ともなっている精緻に作り込まれたリアルな舞台セット。さらに重要なのが観客の目の前でガスコンロに火を入れ食事を用意し、頻繁に登場する食事シーン。食べるという生命維持のための行為を発端に、会話という人間の社会活動の基本を司る場面が生まれ、食卓を囲む人の言外に潜む心情や個人的背景を炙り出していく。物語は食卓を中心に展開していきます。客席まで響いてくる鍋の金属音、ビール缶を開けて炭酸が抜ける音、食器やお箸がカチャカチャと鳴る音が観客をさらに作品世界に引き込みます。

富山のうまい飯とのコラボ「漁師めし」

画像5

            <飲食店内のポスター>

バスツアーでも同様に大切にしたいのが参加者とのお食事タイム。富山の人気店が劇中の「漁師めし」を各店の解釈で創作したという期間限定特別メニューを、観劇前のランチにいただきました。5つのテーブルに分散し、公演を観る、という共通の目的以外は初めましての他人だった参加者も、ご飯を食べながらここで打ち解けます。普段どんなことやってるの?好きな俳優は?出身は?おいくつ?と根掘り葉掘りの会話をするほどに相手との距離がぐっと縮まります。

➡コラボ店とメニューは「笑顔の砦’20帰郷」特集ページからhttps://www.aubade.or.jp/static/special/egaonotoride/

「演劇は、“ゆるい”」

画像6

            <タニノクロウさん>

画像7

      <タニノさんとのスペシャルアフタートーク>

「オール富山」プロジェクトとは、経験不問の公募で集まった富山出身または在住者の美術製作スタッフ及びキャストと共に製作に臨むオーバード・ホールのプロジェクトのことで、タニノクロウさんと実施した2019年「ダークマスター2019 TOYAMA」に続いて今回が2回目。タニノさんと舞台美術家・稲田美智子さん指導の元で稽古やセット製作が進むとはいえ、初顔合わせのチームが共通言語を模索したり、技術を習得したり、歩調を揃えるだけでも時間がかかりそうです。半年近くに及ぶこのやり方になぜ敢えて、挑むのか。

タニノさんが2019年に第36回とやま賞を受賞した際の贈呈式講演会で「ダークマスター2019TOYAMA」について言及した言葉から、お考えを伺うことができます。

「演劇は“ゆるい”。それが重要。現代演劇は寛容さを持って集まれる場なので、安心して問題を深く探ることができる。だから現代演劇は必要なのだと思っています」 ➡︎詳細はステージナタリー  2019年5月29日に掲載。 https://natalie.mu/stage/news/333406       

ただただこのプロジェクトに参加したい!という気持ちでプロアマ関係なく集まったゆるい場所。そこから作品を生み出す可能性に賭け、雑多な出来事も許容し、創作の原点に立ち返る贅沢なプロジェクトが約半年後には見事な舞台セットを完成させ、観客を迎えるのです。

画像8

      <公演後に舞台セットを近距離で見学>

演劇を通して関係人口を1万人作りたいというタニノさん。バスツアーに参加した20名もこれで1万人の仲間入りをしました。その1万人が再び出逢い、語らい、創造の源となる食卓を囲む日が、一日でも早く戻りますようにと願うばかりです。

◎必見!「劇的!マンガ同行記」

画像9

漫画家志望のムラタさんがツアーの様子を書き下ろした力作。      ➡https://www.kanazawa21.jp/files/koryu_2020/comic_busstour.pdf

◎「笑顔の砦’20帰郷」有料オンデマンド配信中            劇場で「笑顔の砦’20帰郷」をご覧になれなかった方のために、2021年2月3日まで有料オンデマンド配信で観られます。              ➡詳細はオーバード・ホールのWebページhttp://www.aubade.or.jp/events/event/タニノクロウxオール富山-2nd-stage「笑顔の砦-20帰郷」/

       黒田裕子(交流課チーフ・プログラム・コーディネーター)








みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!