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みんなとシアター21〜目の見えない人と映画鑑賞

2018年の秋、東京の田端にある座席数20の小さな映画館、CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)を初めて訪れました。

ここは「日本一小さくて、日本一やさしい映画館」を謳っていて、目や耳の不自由な人、車いすの人、発達障害のお子さんや小さなお子さん連れの方など、誰もがいつでも安心して一緒に映画を楽しむことができる、すべてのお客様を対象とする「ユニバーサルシアター」です。

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▲CINEMA Chupki TABATA(外観・ウェブサイトより転載)

チュプキで驚いたことが3つあります。1つは目の見えない方が盲導犬と一緒に1人で来館していたこと。2つ目は木や緑のぬくもりを感じる空間に複数のスピーカーが点在する内装。開演すると、新作の邦画に日本語字幕が付いていて、イヤホンを装着すればバリアフリー音声ガイドが、映像の音声や音楽は優れた音響環境から流れてきて、多様な映画の楽しみ方という3つ目のビックリが待っていました。

私は2017年から美術館の地下1階にある「シアター21」でフィルム映画祭を担当しています。「まるびぃ シネマ・パラダイス!」というプログラム名には、35mmフィルムの映写機がある美術館(まるびぃ=「まるいびじゅつかん」である当館の愛称)で映画の楽園をつくろうという思いが込められています。

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▲2014年から7年続くフィルム映画祭の歴代チラシ

運営は10代後半から20代半ばの映画に魅せられた若い世代が担当し、フィルム映画を懐かしむ人はもちろんのこと、馴染みの薄い人たちにも見てもらうべく、毎年趣向を凝らしています。

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▲2019年度の「白い巨塔」上映時は白衣を来て接客。中央にある総回診の顔出し看板やポスターに掲載するイラストは、金沢美術工芸大学のメンバーによるもの。


今年度は19名の学生がボランティアメンバーとして参加し、7月の終わりから11月21日(土)と22日(日)の本番に向けて準備を進めています。彼らと一緒にユニバーサルシアターについて学びたいと思い、9月と10月にチュプキ代表の平塚千穂子さんを講師に迎えて、オンライン・ワークショップを開催しました。

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1回目はチュプキの紹介を中心に、2回目は今回上映する「座頭市物語」のワンシーンを「映画の音のみ/映画の音と音声ガイド/通常の映画/通常の映画と音声ガイド」の4パターンで鑑賞しました。すると、1つ目の視覚情報に頼れない音のみは時間を長く感じること、そして音声ガイドには客観的な視覚情報が盛り込まれつつ、聞く人に想像の余地を残す工夫があることなどもわかりました。

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体験した結果、同じく平塚さんが代表を務めるバリアフリー映画鑑賞推進団体シティ・ライツが、目の見えない人と一緒に制作した音声ガイドの中から「座頭市物語」と「嵐を呼ぶ男」を専用のラジオで貸し出すこと、関連企画として平塚さんに「バリアフリー音声ガイドで“みる”映画の魅力」について語ってもらうことを決めました。

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▲「まるびぃ シネマ・パラダイス!vol.7 銀幕に生きたスタアたち」

「若いみんなが頑張ることで、目の見えない人がお出かけする目的地ができる。喜ばれる体験が一番の喜びだと知ってもらえたらうれしいな」。

ワークショップの最後に平塚さんがメンバーへ送ったこのエールを実感できる週末となりますように。

吉備久美子(金沢21世紀美術館 エデュケーター)


※見出し画像「知っていますか?バリアフリー音声ガイド」と上述の「スケジュール」は、今年度のチラシからの抜粋です。


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