「ねりごむスタンプ」で描く版画・身近なものの凸凹をスタンプにしよう 〜まるびぃ工作パラダイス! その3
●「消しごむ」で「描く」!?
これは「ねりケシいじり」と「スタンプづくり」がまとめて楽しめるという、私にとっては無限に楽しめる(!?)夢のような絵の描きかたです。
この記事は金沢21世紀美術館エデュケーター・キムラタケシが、キッズスタジオの週末プログラム「ハンズオン・まるびぃ!」での活動風景とともに、家庭で子供も大人も一緒になってワイワイ楽しめる工作を紹介します。
あなたは「ねりけし」好きですか?
「練り消しごむ」とか「ねりごむ」とか呼ぶ、あれです。僕は大好きです。
小学生のころはよく「ねりけし」のかたまりを何度も引っ張ってはちぎって、手応えを楽しんでいました。特に伸びきったところが、綿のようにホロホロってなるのを見るのも好きでした。そして粘土のようにこねて小さな人形を作って並べて遊んだりもしました。そういえば字や絵はあまり消していないような…、あぁそうやって「ねりけし」はずっと昔から、僕の数々の「目的外使用」を受け止めていたのですね。
今回は、そんな「ねりけし」(ねりごむ)を「描く道具」として使います。ねりごむが持つ独特の「形を変えられる性質(可塑性)」を利用して、身近な小物の凸凹を型どってオリジナルのスタンプを作ろうというものです。さあ、ねりごむスタンプで版画を楽しもう!
●「ねりごむスタンプ」にチャレンジ!!
用意もやりかたもカンタン。
いろいろなモノを型取りしてスタンプにしよう!
用意するもの:練り消しゴム(ねりごむ)、スタンプ台(水性顔料タイプがおすすめ)、スタンプにしたい小物たち など
★注意★
お子さんが制作する場合は、インクが服や周りの大事なものを汚さないように大人の人が見守ってください。
①ねりごむを練って柔らかくして、団子状にします。
②団子を平らな台に押し付けて平らな面を作ってから、そこに型取りしたいもの(例:ゼムクリップやペットボトルキャップなど)をならべて押し付けて、ゆっくりはがします。
③ねりごむにできた凸凹の面をスタンプ台に当ててインクを着けて、紙にスタンプしてみよう。どんな画面になるかな?
④新しい型に変えたいときは、いらない紙に何度もスタンプしてインクの色が薄くなってから、ごむを練り直そう。
型取りをはじめると次は何にしよう?と周りのいろいろなものが気になってきます。ペンのキャップ、鍵穴、服のボタン…どんどんスタンプを作ってみよう!
クリスマスカードなどのカードにも!
●工作のワンポイント
1.スタンプインクの種類
・今回の制作では、スタンプ台のインクは「水性顔料」タイプが比較的扱いやすいです。一般的な「油性」のインクはゴムの表面で乾きにくいので、うっかり手や周囲のものを汚さないよう注意して使ってください。
左が水性顔料インク、右上下が油性顔料インクの製品例
2.型どりかたの工夫
・一度型どったものを、少しずらしてごむに押し付ける
・ちがう物の型を重ねてとる
・型どったごむをわざとゆがめてスタンプする
などなど、いろいろ試してみてください。押す強さやインクの着け具合で、時に日光写真やレントゲン写真にも見えるような、微妙な濃淡が表現されます。何度もやりなおしができるので、どんどんチャレンジしてみよう。
●おまけのはなし
練りゴムを「消す」以外に使いみちを考えると、ゴミクズをくっつけて取ったり、ポスターを壁に貼ったり、いろいろな使い方をしている人も多いのでは。
今回は型取りの技法でのスタンプ版画を紹介しましたが、絵を描く楽しみとともに、好奇心をふくらませながら物をどう使うかを考えたり、身の回りのものの良さを再発見することを味わってもらえるといいなと思います。僕も「ねりごむスタンプ」で何を型にするか探して、どんな向きに押すかなどを工夫していくうちに、身近な物の中にたくさんの新鮮な面白さが宿っていることに気づいて楽しくなりました。(エデュケーター キムラタケシ)
●(美術館活動の紹介)
今回紹介した「ねりごむスタンプ」は、2016年度の金沢21世紀美術館キッズスタジオ・プログラム「ハンズオン・まるびぃ!」の活動記録から構成しました。このときは当時開催中の「コレクション展 ダイアリー」を紹介するとともに、身近な物へのまなざしと、そこから自分にとって面白いものを見つけ出す心を刺激する方法の一つとして着目し、「見つけたカタチを残す日記帳」を作りました。
2016年度「ハンズオン・まるびぃ!」
できるもんね!アートテクニック「スタンピング」
見つけたかたち・スタンプダイアリー